故意の無知: 他社特許調査方針のガイダンス – Willful Blindness: Guidance for In-House Patent Review Policies

2020年3月13日

Written by Paul C. Haughey (和訳:穐場 仁)

多くの社内弁護士が故意侵害(willful infringement)のリスクを回避するために「他者特許を調査しない」方針を採用しているが、皮肉なことに、それ自体が故意侵害のリスクを引き起こす可能性がある。2019年の2つの判例がその背景を説明している。

2019年10月、テキサス州東部連邦地裁のGilstrap判事は、「十分に主張された故意の無知(willful blindness)は、故意侵害に関する主張としての要件を満足する」と述べている。Motiva Patents LLC v. HTC Corporation , E.D. Texas, 9:18-cv-00179 (Oct. 2019)。Gilstrap判事のこの判示は、HTC社が「他社の特許を調査しない(他者の特許を調査しないよう従業員に指示することを含む)という方針または実務を有していた」とするMotiva社の訴状での主張に基づいている。Gilstrap判事は、これは故意侵害の主張を棄却させようとするHTC社の試みを打破するのに十分であると判示した。

2019年の別の判例では、故意侵害が成立しないことを求める略式判決の動議(motion for summary judgment)が認められた。裁判所は、5件の特許の購入を打診する複数の電子メールを無視することが故意の無知に該当するとは判断しなかった。TC Technology LLC v. Sprint Corporation , D. Del., No. 16-cv-153-RGA (2019年5月31日 memorandum order)。

故意の無知が主張される際には、基本的に、故意侵害の要件として通知は必要がない。2011年の連邦最高裁判所判決Global-Tech Appliances, Inc. v. SEB S.A. , 131 S. Ct. 2060 (2011) において、同最高裁は、誘引侵害(inducement infringement)において、特許を実際に知っていること(actual knowledge)は必要ではないと判示した。故意の無知が誘引(inducement)とされた。Global-Tech判決では、被告が原告製品を模倣した後、特許弁護士にクリアランス調査(right-to-use study) を行わせたが、他者製品を模倣したことは告げられなかった。

2015年、Suprema v. ITC (Investigation No. 337-TA-720)において、連邦巡回控訴裁判所(The Federal Circuit)は、故意の無知が成立するためには、(1)事実が存在する確率が高いという主観的な信念と、(2)その事実を知ることを避けるための意図的な行動、が必要であると判示した。Suprema判決では、Global-Techよりも悪質さの低い事実関係で故意の無知が認められた。Suprema 判決の事実関係は、単に、Cross Match社が競合相手であること、および、Suprema社 が調査して他のCross Match社特許を特定していたことであった。

このように、Suprema v. ITCの判決は、企業のポリシーに関する一定のガイダンスを提供している。企業内のポリシー策定にあたっては他者の特許調査を一括して禁止すべきではない。一方、弁護士でない者が他者特許の調査をする際の問題を回避したい場合、「特許解釈の法的な複雑さを鑑み弁護士でない者は他社特許の調査を行わない」とのポリシーを採用することは可能である。むしろ、他者特許調査のリクエストは法務部門に対して行われるべきであり、法務部門は、関連する特許が存在する可能性が高い(Suprema判決の基準)と思われるかどうかに基づいて(そして、さらに予算に基づいて)、調査が適切であるかどうかを判断する。これはケース・バイ・ケースの判断であり、一律に調査を行わないとするものではない。関連する特許が存在する可能性が高い例としては、競合他社の製品をコピーした場合、または、貴社が類似の製品を持つ競合他社の他の特許について事前に知っている場合が含まれる。かかるポリシーが形だけのものではないように見せるためには、いくつかの例で実施に調査が行われていることを示せるよう準備することが必要である。

私の経験では、Freedom-to-Operate (FTO)調査で発見された特許については、通常、それらが無効であるかまたは侵害されていないという鑑定に結び付くことが多く、または、設計変更を行うなどしてそれら特許に対処できることが多い。したがって、故意侵害のリスクは、FTO調査によって軽減することができるものである。また、FTOを行っておくことによって、仮に訴状を受理したとしても、CEOや否定的な報道に即座に適切な対応をとることができる。このような調査を機会をとらえて行うことは、侵害を回避するための努力を尽くすことを示すことにもなり、調査されていない製品の特許が侵害された場合であっても、侵害を回避するための合理的な試みを示すことにより故意侵害の主張に対して勝訴する可能性を高めることができる。

また、新たな事業分野、買収、重要な新製品、大切な新機能についても、FTOの調査を行うことが賢明である。ほとんどの侵害訴訟では、故意侵害は認定されず、認定されたとしても、損害賠償額の増額は自動的になされるわけではない。したがって、私は、特許調査を行わない「ノー・レビュー・ポリシー」が損害賠償額の増額という稀なリスクを最小化することに失敗しているものである一方、より一般的な通常の損害賠償額というリスクを増加させているものと考える。

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Paul C. Haughey

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