Alerts 新しい日米の重要鉱物貿易に関する協定が日系企業のインフレ抑制法EV税額控除の扉を開く – New U.S.-Japan Critical Minerals Trade Deal Opens the Door to Inflation Reduction Act EV Tax Credit for Japanese Companies

2023年03月31日

Written by Thomas G. AllenStephen M. Anstey and Kurtis G. Anderson  (和訳:穐場 仁)

2023年3月28日、日米両国は電気自動車のバッテリー製造に関する重要鉱物のサプライチェーンを強化し、「そのような重要鉱物の自由な貿易を確保する」ための二国間貿易協定に署名した。この貿易協定により、日本企業は米国のインフレ抑制法(IRA)の有利な第30D条クリーン・ビークル・クレジット(Clean Vehicle Credit)を利用し易くなるかもしれない。

第30D条クリーン・ビークル・クレジット(Clean Vehicle Credit)は、要件を満たす新しい電気自動車の購入者に最大7,500ドルを提供する。適格車両は、バッテリーに含まれる「構成部品の価値」の少なくとも50%が「北米で製造または組み立てられている」場合、およびバッテリーの製造に使用される「適用可能な重要鉱物の価値」の少なくとも40%が「米国、または米国が自由貿易協定を有する国において抽出または加工されている」場合、クレジットの全額を受け取ることができる。「適用可能な重要鉱物」にはリチウム、グラファイト、マンガン、コバルト、ニッケルが含まれる。

米国は20カ国以上と包括的な自由貿易協定を結んでいるが、日本はその中に入っていない。これにより、日本(米国同盟国で世界第2位の民主主義経済国)とその企業は、貴重なIRA税制上のインセンティブの恩恵を受けることができなかった。重要鉱物に関するこの新しい貿易協定はそれを変えるかもしれない。

IRAは、「自由貿易協定」を構成するものを含め、税額控除に関するいくつかの重要な条件を定義していない。バイデン政権は重要鉱物に関するこの新たな自主的自由貿易協定で十分だと期待している。自由貿易協定は、リチウム、グラファイト、マンガン、コバルト、ニッケルを含む「重要鉱物の輸入の禁止又は制限」を、両国及び両国間で明確に回避しつつ、適格性を創出するために特に調整されている。

この戦略が成功すれば、バイデン政権はこの貿易協定を米国の同盟国であり貿易相手国で、現在同じ理由で第30D条クリーン・ビークル・クレジット(Clean Vehicle Credit)の適用から除外されている欧州連合との間で、進行中の交渉のための「新しい枠組み」として利用することを計画している。

新貿易協定が日本企業に対するIRAの税額控除の一部の適格性を拡大するかどうかは、米国財務省が作成予定のガイダンスによる。12月の期限を過ぎたため、米国財務省は「自由貿易協定」構成要素を含め、重要なIRA条件を定義する一連の規制をすみやかに発行する予定である。

キルパトリック・タウンゼントは、これらの進展を綿密にモニタリングしており、米国財務省の期待される発表の後、最新の分析を提供する予定である。

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