特許審判部(PTAB)においてデザイン特許(Design Patent)の有効性を争うには – 論点を注意深く選ぶ – Challenging Design Patent Validity At The PTAB – Pick Your Shots Carefully

2020年8月4日

by Michael A. Bertelson (和訳:穐場 仁)

広く報道されたApple v. Samsung訴訟は、デザイン特許(Design Patent)の力とそれに伴う潜在的に大きな損害賠償の可能性にハイライトを当てた。特許(Utility Patent)と同様に、デザイン特許(Design Patent)は、特許審判部(PTAB)において付与後手続(post-grant proceedings)により異議を申し立てることができる。しかしながら、デザイン特許(Design Patent)は、歴史的に無効化することがより困難である。平均すると、特許審判部(PTAB)は、特許(Utility Patent)の場合は60-70%の割合で付与後手続(post-grant proceedings)を開始しているのに対し、デザイン特許(Design Patent)の場合は40%しか開始していない。参照 https://www.uspto.gov/sites/default/files/documents/Trial_Statistics_2019-09-30.pdf.

この割合の違いは、特許(Utility Patent)とデザイン特許(Design Patent)の根本的な違いによるものと思われる。

1つの根本的な違いは特許(Utility Patent)とデザイン特許(Design Patent)においてクレーム範囲がどのように定義されるかにある。特許(Utility Patent)は製品がどのように使用され機能するかを保護する。特許(Utility Patent)の権利範囲は、特許の請求項によって定義され、それは非常に広く、発明の広範囲の異なる実施形態を潜在的にカバーすることができる。一方、デザイン特許(Design Patent)は製品の装飾的な外観または見た目を保護する。デザイン特許(Design Patent)の権利範囲は、デザイン特許(Design Patent)の図面で示される特定のデザインと定義される。デザイン特許(Design Patent)は、より広範な権利範囲に及ぶことが少なく、特許(Utility Patent)よりも一般的に特定の実施形態により焦点を当てている。この権利範囲の違いは、しばしばデザイン特許(Design Patent)において比較的近い先行技術をみつけることが困難であることを意味する。

デザイン特許(Design Patent)と特許(Utility Patent)との間のもう一つの根本的な違いは、特許の有効性を評価するために採用される法的基準である。特許(Utility Patent)と同様、デザイン特許(Design Patent)は、新規性、非自明性、及びその他の点で合衆国法典第35条の要件を満たす発明をクレームしなければならない。しかし、これらの要件はデザイン特許(Design Patent)においては異なった検討がなされる。

たとえば、デザインが自明であるためには、以下の2 つが示される必要がある。第1は、先行技術である「主引例」は「クレームされたデザインと基本的に同じ」特徴を有するものでること。第2に、「他の参考文献を用いて主引例を変更し、クレームされたデザインと同一の全体的な視覚的外観を有するデザインを作成することができること。ただし、他の参考文献は「ある装飾的特徴の外観が他の装飾的特徴への適用を示唆するように主引例と関連する」場合にのみ、主引例を修正するために用いることができる。」Apple Inc. v. Samsung Electronics Co., 678 F.3d 1314, 1329-30(Fed. Cir. 2012)(引用及び引用は省略)。

この2つのことを実務において証明することは困難であることが多い。例えば、特許審判部(PTAB)はVitro Packaging v. Saverglass, IPR2015-00947の中で、以下に示す2つの先行技術のボトルのデザインのいずれも主引例に値するほど特許されたデザインと十分に類似していない、として審理の開始を拒否した。

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先行技術#1に関して、特許審判部(PTAB)は先行技術が登録されたデザインよりも湾曲した肩部を有するボトルであり、2つのボトルの内側テーパー(tapers)がいくらか異なっていることに注目した。先行技術#2に関しては、特許審判部(PTAB)は、先行技術が登録されたデザインのようにボトルが透明ではないことに着目した。先行技術と登録されたデザインとの間の上記及びその他の相違は、いずれかの先行技術を主引例として使用することを妨げ、申立人が自明性の決定の第2段階に到達することを妨げるのに十分として、審理開始を否定した。

デザイン特許(Design Patent)において新規性を争うことは、ほとんど同一の先行技術を見つけることができない限り、同様に困難である。法律は、先行技術がクレームされたデザインを開示しているためには「すべての重要な点で同一」でなければならないことを要求している。Hupp v. Siroflex of America Inc., 122 F.3d 1456(Fed. Cir. 1997).

このような特許(Utility Patent)との違いは、デザイン特許(Design Patent)の有効性に挑戦することをより困難にしている一方で、それは決して不可能ではない。いくつかの例では、先行技術のデザインが伝統的な新規性および自明性の挑戦を成功可能にするほど類似している例を示している。参照Johnsonville Sausage LLC vs. Klement Sausage Co. Inc., 2020 WL 1492983(E.D. Wis. 2020, Mar 27) (2つの先行技術のトレイのデザインの組み合わせに基づき、ソーセージのトレイのデザイン特許(Design Patent)を自明とした)。他の例では、特許審判部(PTAB)におけるデザイン特許(Design Patent)の有効性への挑戦が、典型的な新規性あるいは自明性への挑戦とは異なる手段に依拠した成功事例もある。いくつかの例を以下に示す:

装飾性(Ornamentality)の欠如 – 特許審判部(PTAB)は、Sattler Tech Corp. v. Humancentric Ventures, LLC, PGR2019-00030のなかで、以下に示すコンピュータモニター取付金具の米国デザイン特許第823,093号のPGR(付与後レビュー)の審理を開始した。

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35 USC 171の下では、デザイン特許(Design Patent)は、単に新しくかつ非自明的だけでなく、「装飾的」でなければならない。「デザイン特許(Design Patent)は、クレームされたデザインが主として装飾的ではなく主として機能的である場合、すなわち主張されるデザインが物品の実用目的によって必要とされている場合、無効であると宣言することができる。」High Point Design LLC v. Buyers Direct, Inc., 730 F.3d 1301, 1315(Fed. Cir. 2013)。ここで、PGRの請求者は、特許になったデザインは接続タブとはとめネジのデザインが装飾的でなく、機能的な事項(ブランケットがモニタにどのように接続されるか)と理解され、登録になったデザインは主に機能的であると主張した。特許審判部(PTAB)はこれに同意し、Sattler Techが同デザイン特許(Design Patent)は主に機能的であるとして無効である可能性が高いことを明らかにしたとして、PGR(付与後レビュー)を開始した。その後, デザイン特許(Design Patent)所有者は反対の結論を主張したが、結果としてデザイン特許(Design Patent)が取り消された。

無効な優先権主張 – 特許審判部(PTAB)は、C&D Zodiac v. B/E Aerospace, PGR2017-00019において、飛行機の化粧室のデザインの米国デザイン特許第764,031号を無効にした。当デザイン特許は、先に出願された特許(Utility Patent)の優先権主張していた。優先権主張はデザイン特許(Design Patent)の有効性にとって極めて重要であった。なぜなら、デザイン特許(Design Patent)権者は、当該特許が出願される1年以上前に、登録されたデザインを使用した独自の化粧室を販売していたからである。

特許(Utility Patent)と同様に、優先権主張がデザイン特許(Design Patent)において有効であるためには、優先権書類は「発明者が発明が出願日時点でクレームされた主題を所有していたことを当業者に合理的に伝えなければならない。」In re.Owens, 710 F.3d 1366.

非常に類似している一方で、特許となったデザインの化粧室と優先権主張で示された特許の間にはいくつかの違いがある。例えば、登録されたデザインの化粧室の前向きの壁は、優先権主張の特許の比較的角度のある壁よりも湾曲しており、かつ優先権主張の特許の化粧室の前向きの壁は、登録されたデザインではその底部に特許となったデザインには存在しないくぼみを有していた:

これらの違いを踏まえ、特許審判部(PTAB)は登録されたデザインは優先権主張の対象とはならないと判断し、特許権者自身の出願前販売に基づき、デザイン特許(Design Patent)を無効とした。

以上のように、デザイン特許(Design Patent)は、特許と同様に、特許審判部(PTAB)において成功的に挑戦することができるが、伝統的な新規性や自明性の主張は困難な場合があり、攻撃の態様を慎重に選択することが大切である。

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