米連邦最高裁判所は、ランハム法(the Lanham Act – 連邦商標法)に基づく被告利益の回収のための条件として、被告の故意が必要ではないことを判示 – The Supreme Court Abrogates Willfulness as a Bright-Line Prerequisite for Accountings of Profits Under the Lanham Act

2020年4月23日

Theodore H. Davis Jr., Joseph Petersen and Rita Weeks (和訳:穐場 仁)

連邦控訴裁判所は、長年にわたり、ランハム法(the Lanham Act)に基づく訴訟当事者にとって極めて重要な問題、すなわち、同法第35条(a)に基づき被告の利益の回収を求める原告が、その救済の条件として被告による故意の違法行為を立証しなければならないか否かについて意見が分かれていた。

Romag Fasteners, Inc. v. Fossil, Inc., No. 18-1233, 2020 WL 1942012(U.S. Apr. 23, 2020)において、米連邦最高裁判所は、分裂していた判断を原告に有利な形で統合し、故意の立証を求める断定的な基準は法律の明示的な文言と調和せず、救済の衡平法的性質とも一致しない、と判示した。

この判示は、ここ何年もの間でのランハム法(the Lanham Act)に関する重要な解釈として、同法に基づく金銭的救済を追求する際のレバレッジを増加させることとなった。

実際の損害(actual damages)と被告の利益に関する異なる基準

ランハム法(the Lanham Act)に基づいて提起した訴訟に勝利した原告は、いくつかの種類の金銭的救済を求めることができる。そのうち最も重要な2つの救済は、原告の実際の損害(actual damages)の賠償と、被告の利益(defendant’s profits) の回収に関する衡平法的な救済である。

裁判所と訴訟当事者は、しばしば、両者を混同し混乱させるが、両者は別々なものであり、慎重に検討する必要のある別個の基準に従うものである。

例えば、勝訴した原告は、被告の責任を立証することにより実際に生じた損害額の賠償を受けることができる。しかしながら、特に、被告の行為によって引き起こされた混同(confusion)や欺瞞(deception)の度合いについて証拠を示せない場合には損害額の証明は困難となり得る。

対照的に、被告の利益の回収の仕組みは、一般的に勝訴した原告に有利に働く。

第35(a)条に明示された要件に基づき、かかる原告は、被告の「売上高」のみ証明すれば足りる。

その後、被告はこれらの売上高を合法的なものと違法なものとに分配するとともに、これらから許容される可能性のある控除額を示すことになる。

もし、被告が、両者について立証責任を果たせなければ、売上高全体が原告により回収されるおそれがある。

一般的にはWMS Gaming Inc. v. WPC Prods. Ltd., 542 F.3d 601 (7th Cir. 2008)参照。

したがって、その利益が回収される可能性は、ランハム法(the Lanham Act)違反の罪に問われた被告にとって、原告の実際の損害を賠償するリスクよりも大きな懸念をもたらすこととなる。

それにもかかわらず、被告利益の回収は衡平法的な救済手段であるため、裁判所はそれを当然のこととして認めることはめったになく、その代わりに、様々な考慮事項に基づいて調整してきた。

これらのうち最も一般的なものは、以下に述べるように、被告の違法行為が故意であったか否かであり、どの巡回区裁判所によって判断されるかにより、歴史的に異なるウエイトで故意が考慮されてきた。

巡回区裁判所の歴史的分裂

被告利益の回収の条件に関する裁判所の判断の不一致は長年にわたるものであるが、3つの異なる巡回区裁判所から出された3つの比較的最近の判決は、その不一致の範囲と、故意の役割に対処する際に連邦裁判所が歴史的にとった様々なアプローチを示している。

例えば、第2巡回区控訴裁判所は、故意は被告利益の回収の明白な前提条件であると判示したため、原告がそのような立証をできなければ救済を否定した。

See Pillar Dynasty LLC v. New York & Co., 933 F.3d 202, 212-14 (2d Cir. 2019)参照。

この判示は、他の巡回区裁判所における伝統的な判断と一致しており、他の巡回区控訴裁判所は被告利益の回収についての故意を示すことを要求している。

Fifty-Six Hope Road Music, Ltd. v. A.V.E.L.A., Inc., 778 F.3d 1059, 1073-74 (9th Cir. 2015); W. Diversified Servs., Inc. v. Hyundai Motor Am., Inc., 427 F.3d 1269, 12-72-73 (10th Cir. 2005); Minn. Pet Breeders, Inc. v. Schell & Kampeter, Inc., 41 F.3d 1242, 1247 (8th Cir. 1994); ALPO Pet Foods, Inc. v. Ralston Purina Co., 913 F.2d 958, 968 (D.C. Cir. 1990)参照

対照的に、第5巡回区裁判所は、故意は以下の6つの排他的ではない要因のうちの1つに過ぎないという前提で被告利益の回収の判断を行ってきた:

(1) 被告が混同または欺く意図を有していたか否か、(2)販売が迂回されたか否か、(3)他の救済手段の妥当性、(4)原告による自己の権利主張の不当な遅延、(5)不正行為が利益を生まないようにすることの公益性、(6) パーミング・オフ(偽物をつかませる)の場合であるか否か。

Retractable Techs., Inc. v. Becton Dickinson & Co., 919 F.3d 869, 876 (5th Cir. 2019) (引用Pebble Beach Co. v. Tour 18 I Ltd., 155 F.3d 526, 554 (5th Cir. 1998), abrogated on other grounds by TrafFix Devices, Inc. v. Mktg. Displays, Inc., 532 U.S. 23 (2001)により他の理由で廃止された)

この多因子テストは、第3、第4、および第6巡回区裁判所によって歴史的に適用されてきたものとも一致する。

La Quinta Corp. v. Heartland Props. LLC, 603 F.3d 327, 334 (6th Cir. 2010); Synergistic Int’l, LLC v. Korman, 470 F.3d 162, 175 (4th Cir. 2006); Banjo Buddies, Inc. v. Renosky, 399 F.3d 168, 165 (3d Cir. 2005)参照。

最後に、第11巡回区裁判所の見解は、原告が以下に示される3つの可能な理論のいずれかに基づいて被告利益の回収を追求した場合にのみ、故意が前提条件となる可能性を示唆している。3つの可能な理論は:

(1) 被告人の行為が故意かつ意図的であったこと、(2)被告人が不当に利益を受けていたこと、(3)将来の行為を抑止する必要があること、である。

PlayNation Play Sys., Inc. v. Velex Corp., 924 F.3d 1159, 1170 (11th Cir. 2019).

裁判所は、被告に故意の違法行為がない場合であっても、被告利益の回収が適切である少なくとも何らかの状況を認定するにあたり、第1および第7巡回区裁判所と一致する基準を適用した。

Tamko Roofing Prods., Inc. v. Ideal Roofing Co., 282 F.3d 23, 36 (1st Cir. 2002); Roulo v. Russ Berrie & Co., 886 F.2d 931, 940 (7th Cir. 1989)参照

Romag Fasteners判例での米連邦最高裁判所の見解

被告利益の回収における故意の適切な役割に関する巡回区裁判所の分裂は、マグネティック・スナップ・ファスナーの製造会社が提起したRomag Fasteners事件を米連邦最高裁判所に審理させるに至った。本事件は、被告が原告のマークの模倣を伴ったファスナー付きハンドバックを製造したとして提訴されたものである。

原告の主張に関するトライアルに続いて、 advisory jury(参考的意見を述べる陪審員)は、不当利得理論(unjust enrichment theory)の下で被告の利益として90,759.00ドル、抑止理論(deterrence theory)の下では被告の利益として6,704,046.00ドルの回収を勧告した。

陪審はその勧告の中で、被告が原告の権利を「無視するような呼びかけ(callous disregard)」をして行動していたにもかかわらず、故意に行動していたとは認定しなかった。

これらの認定のうち第2の故意が認定されなかった点にのみ基づいて、連邦巡回区裁判所は、第2巡回区裁判所の判例法を適用し、原告は被告利益の回収を受ける資格がないと判示した。

米連邦最高裁判所は、原告の上告書(a writ of certiorari)によって提起された問題 – ランハム法(the Lanham Act)第35条(15 U.S.C. 1117(a))に基づき、「故意侵害は被告の利益の回収の前提条件である」 - につき、審理することを2度にわたり同意した後、最終的に前提条件であることを否定する結論に達した。

最高裁は、この判決の基礎として以下の事項を検討している。

まず、最高裁は、第35条(a)項の条文そのものを引用している。同条文の関連個所は:

米国特許商標庁に登録されたマークの権利者の権利が侵害され、本法第43条(a)若しくは第43条(d)に基づく侵害又は同条(c)に基づく故意の侵害が本条に基づく民事訴訟で立証された)場合、原告は、・・・及び衡平の原則に従うことを条件として、(1)被告の利益、(2)原告が被った損害、及び(3)訴訟費用を回収する権利を有するものとする。15 U.S.C. §1117(a) (2018)

最高裁は、第43条(c)に基づく商標希釈化(dilution)の可能性に関する訴訟における金銭的救済のためには故意の必要性が明示されていることに言及し、「原告は商標の虚偽又は誤認させるような使用が訴因である、第43条(a)の違反を主張し立証した。

そしてこのような場合には、条文の文言は、被告の利益を回収する要件として故意を立証することを決して要求はしていない」と述べた。2020 WL 1942012, at *2.

さらに、これは「そこに存在しない通常の文言を条文に読み込んだという場合ではなく、この条文にあるように、議会がまったく同じ条文に問題の用語を使っている場合には、用心深く避けなければならないものである」と述べた。Id.

しかし、それは、法解釈上の観点から、被告のみの問題ではない。

その代わりに、最高裁は「ランハム法(the Lanham Act)は被告の主観についてしばしば明示的に規定している」と判示し、「われわれの面前の規定にはこのような規定がないことが・・・すべてを伝えているように思われる」と結論した。Id.

最高裁は、衡平法裁判所(courts of equity)の伝統的実務が求める故意の立証は、「ランハム法(the Lanham Act)が前進させようとしている衡平の原則のレベルと同じである」との被告の主張に対しても同情的ではなかった。Id. at *3

裁判所は、「好奇心をそそる示唆(curious suggestion)」を拒絶した。なぜなら、それは、「我々に、議会が、ランハム法(the Lanham Act)のいたるところで故意(mens rea)を条件としている一方、ここでは故意の要件を(明示的ではなく)遠回しに意図していたと想定することを要求するものであり、「衡平の原則」という表現は、商標法のような個別の法領域では、故意(mens rea)についての実質的基準を容易に思い浮かべることができないからである」と述べている。Id.

同じ意味で、最高裁は、主張自体の前提に疑問を呈し、「我々の前に提出した当事者の記録によると、商標法が利益救済を認める前に故意の証明を必要としてきたかどうかは明らかではない」と結論づけた。Id.

最後の分析では、最高裁は次のように述べた。「私たちが確実に言うことができるのは、このようなことである。

故意(mens rea)は、ランハム法(the Lanham Act)以前の事案で被告の利益を計上する際に重要な考慮事項として捉えられていた。

これは、被告の主観的な状態が適切な救済を与えることに関係しているという、あたりまえで、横断的な原則を反映している」と述べた。Id. at *4.

「このような伝統的原則を踏まえれば、商標侵害の被告の主観的状態は、利益の回収が適切であるか否かを判断する上で非常に重要な考慮事項であることは疑いない。

しかしながら、被告の利益を回収するための柔軟性のない前提条件は、それとはかけ離れたものである」と認定した。Id.

「『根拠の無い』商標訴訟を抑止するためには、被告の利益の回収に対する厳しい制約が必要である」ことは事実かもしれないが、その制約を制定するのは議会次第である。Id.

結論

米連邦最高裁判所による、ランハム法(the Lanham Act)に基づく被告利益の回収の明白な前提条件としての故意の必要性の拒絶は、故意を考慮することを全く捨て去ったものである可能性は低い。

反対に、被告の故意の程度は、おそらく第3、第4、第5、第6巡回区裁判所によって適用される多因子テストにおけるその役割と一致する方法で、被告利益の回収に関する判断に情報を与え続けるであろう。

この点について最高裁が見たように、「商標裁判の被告の主観的状態は、被告利益の回収が妥当であるかどうかを判断する上で極めて重要な考慮事項であることは疑いない。」Id.

それにもかかわらず、本判例は第2、第8、第9、第10、コロンビア特別区巡回控訴裁判所のように、実際の損害を立証する固有の困難さと、歴史的に被告を有利にしてきた被告利益の回収という救済手段がしばしば利用できないことに関し、巡回区内の大転換につながると確信している。

したがって、潜在的な被告は、本判決の結果によりこれらの巡回区裁判所で訴訟に直面するリスクが高まることを予想すべきで、これは賠償判決に一か八かの勝負を挑む成功報酬型の弁護士により提起される訴訟を含むものである。

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