Alerts トランプ米大統領のAmerica’s AI Action Plan、米国におけるAIの方向性を決定づける見通し
Written by Stephen M. Anstey, John C. F. Loving and Keval V. Patel (和訳:穐場 仁)
2025年7月23日、トランプ米大統領は「America’s AI Action Plan」を発表した。ホワイトハウスの関連発表announcement によれば、「本計画は、イノベーションの加速、アメリカのAIインフラの構築、国際外交および安全保障の主導という3つの柱にまたがる90以上の連邦政策アクションを規定している」。ホワイトハウスは、本計画の「主要政策」として、「アメリカのAIの輸出、データセンターの迅速な構築促進、イノベーション導入の推進、最先端モデルにおける言論の自由の支持」が含まれていると指摘している。本計画は、政府全体の連邦機関に対して広範かつ多様な要件を定めており、トランプ政権が米国で掲げる野心的なAI目標の支柱となる可能性が高い。AIの影響を受ける、あるいは関心を持つ事業者は、AI Action Planの実施を継続的に注視し、情報提供依頼書 (Requests for Information) への協力、政府当局者との協働、政権とのコミュニケーション、そして関連事項について議会へのロビー活動を通じて積極的に関与することが推奨される。
ある意味で、本AI Action Planは、トランプ政権により撤回されたバイデン前大統領による2023年の「人工知能の安全、安心かつ信頼できる開発と使用に関する大統領令」 (Executive Order on the Safe, Secure, and Trustworthy Development and Use of Artificial Intelligence) を反映してる。例えば、両計画とも連邦機関がAIに関する一貫した連邦アプローチを実施するための数々の要件を定めている。しかし、トランプ大統領のAI Action Planは、アメリカの優位性の確立、AIの大規模活用支援、労働力開発、防衛への影響、及びその技術とインフラを支援する取り組みの強化に重点を置いている。例えば、AI Action Planは、アメリカのAIリーダーシップを阻害するとされる「過激な規制や煩雑な手続き」の撤廃を求めるとともに、「AI時代におけるアメリカ人の労働者の能力向上、次世代製造業の支援、商業用および政府のAIイノベーションの保護、そして同盟国及びパートナーへのアメリカ製AIの輸出」を推進している。
トランプ大統領のAI Action Planの特に特徴的な点は、インフラ整備へ重点が置かれている点であり、これは「Pillar II: アメリカのAIインフラを構築する」で示されている。大統領は、これらの取り組みをサポートするために、「データセンター、半導体製造施設、エネルギーインフラの許認可手続きを簡素化しつつセキュリティを保証する、AIイノベーションのペースに合った電力網の開発、アメリカの半導体製造の回復、軍事および諜報機関向けの高度なセキュリティデータセンターを建設する、AIインフラのための高度なスキルを持つ人材を育成する、重要なインフラのサイバーセキュリティを強化する、設計段階から安全性を考慮したAI技術とアプリケーションを推進する、AIインシデント対応のための成熟した連邦政府の能力を促進する」。このインフラ中心の焦点は、AI技術自体の開発に直接的に焦点を当てていたバイデン政権の取り組みとは大きく異なる。注目すべきは、AI Action Planは、アメリカがグローバルなAI競争における立場を強調していることである。Pillar IIIでは、AIに関するアメリカの世界的な役割について、金融、輸出、製造パイプライン、保護措置の観点から取り上げている。
AI Action Plansは、以下のような、連邦政府向けの数多くの「推奨される政策措置」を列挙している:
- 米科学技術政策局 (Office of Science and Technology Policy ,OSTP) 主導で、企業および一般市民からAIイノベーションや導入を妨げる現在の連邦規制に関する情報提供依頼書 (Request for Information) を実施し関連する連邦機関と協働して適切な措置を講じる。
- 米行政管理予算局 (Office of Management and Budget, OMB) 主導で、2025年1月31日発令のExecutive Order 14192 「規制緩和による繁栄の解放 (Unleashing Prosperity Through Deregulation) 」に沿って、全ての連邦機関と協力し、AIの開発や導入を不必要に妨げている規制、規則、覚書、行政命令、ガイダンス文書、政策声明、機関間合意を特定し、改正または廃止する。
- 米行政管理予算局 (OMB) 主導で、AI関連の裁量的資金提供プログラムを持つ連邦機関と連携し、適用法令に準拠しつつ、資金配分決定時に当該州のAI規制状況を考慮し、当該州のAI規制体制が資金配分や助成金の効果を阻害する場合には資金配分を制限する。
- 政府の調達ガイドラインを改定し、政府が契約を締結するのは、システムが客観的でトップダウンのイデオロギー的バイアスから自由であることを保証する最先端大規模言語モデル (LLM) 開発者に限定されるようにする。
- 米科学技術政策局 (OSTP) が主導する、新たな国家AI研究開発 (National AI Research and Development, R&D) 戦略計画を公表し、連邦政府のAI研究投資を導くことで、次世代のAIブレークスルーの促進を続ける。
- 米国防総省 (Department of Defense, DOD) が米国家情報長官 (Office of the Director of National Intelligence, ODNI) と強調して主導し、米国、その競合国相手、及び敵対国の国家安全保障機関におけるAIツール導入水準の比較評価を、米国防総省 (DOD) と米情報機関 (Intelligence Community, IC) の共同評価として定期的に更新し、これらのAIネット評価に基づいて、米国防総省 (DOD) と米情報機関 (IC)のそれぞれのAI導入戦略の継続的な適応に向けたアプローチを確立する。
- 米労働省 (Department of Labor, DOL)、米教育省 (Department of Education, ED)、米国立科学財団 (NSF)、米商務省 (DOC) 主導で、関連する教育と労働力開発の資金配分において、AIスキル開発を主要目標として優先する。これには、キャリア・アンド・テクニカル・エデュケーション (career and technical education, CTE)、労働力訓練、徒弟制度、その他の連邦政府支援のスキル向上プログラムなど関連プログラムへのAIスキル開発の統合を推進することが含まれる。
- 米国立科学財団 (NSF) の国家セキュア・データ・サービス (National Secure Data Service, NSDS) デモプロジェクトのためのオンラインポータルを設立し、一般市民と連邦機関が制限された連邦データへのアクセスを伴うAI活用事例にアクセスできる窓口を提供する。
- 米国防総省 (DOD)、米エネルギー省 (DOE)、米商務省 (DOC) 内のCenter for AI Standards and Innovation (CAISI)、米国土安全保障省 (Department of Homeland Security, DHS)、米国立科学財団 (NSF)、および学術パートナーは、米国学術界の優秀な人材を募り、AIシステムの透明性、効果性、利用制御、およびセキュリティ脆弱性をテストするAIハッカソン・イニシアチブを調整すべきである。
- 国家環境政策法 (NEPA) 基づき、通常は環境に重大な影響を及ぼさないデータセンター関連行為を対象とする新たなカテゴリー除外 (Categorical Exclusions) を創設。可能な限り、他機関が既に設立したカテゴリー除外 (Categorical Exclusions) を採用し、各関連機関が最大限の効率で進めれるようにすべきである。
- 環境審査の加速と改善にAIを適用する取り組みを拡大すべきである。例えば米エネルギー省 (DOE) のPermitAI (環境影響評価をAIで自動化する仕組み) プロジェクトへ参加する機関の数を拡大するなどが挙げられる。
- 現在の電力網を可能な限り安定化させる。この初期段階では、既存の資産を保護する必要性を認識し、途切れることなく手頃な価格の電力供給を確保することを目的としている。米国は、重要な発電資源の早期廃止を防止し、既存の容量を有効活用する革新的な方法を模索する必要がある。例えば、ピーク需要時に電力網の信頼性を強化するため、既存のバックアップ電源を活用するといった取り組みが挙げられている。この安定化の重要な要素は、電力網のあらゆる地域が全国的な資源充足基準を準拠し、全米で十分な発電容量が継続的に確保されていることを確認することである。
- 既存の電力網資源を可能な限り最適化する。これには、送電システムの効率と性能を向上させる戦略的実施が含まれている。米国は、既存のルート沿いの送電量を増加させるための高度な電力網管理技術や送電線のアップグレードなどの解決策を模索する必要がある。更に、米国は大規模な電力消費者の重要な電力網の期間中に、電力消費を管理する新たな方法を追求し、信頼性を向上させ、システム内の追加の電力を開放すべきである。
- 信頼性の高く、調整可能な電源の相互接続を最優先で進め、最先端技術 (強化地熱、核分裂、核融合など) による新たな発電源の採用を推進する。電力市場を改革し、投資インセンティブと電力網安定化目標を整合させ、発電への投資がシステムの需要を反映するようにする。
- 21世紀の複雑なエネルギー地形 (energy landscape) を切り抜けるための戦略的ロードマップを策定する。現在の電力網の安定化、既存の電力網リソースの最適化、そして未来に向けた電力網の拡大を通じて、米国はAI競争で勝ち抜くと同時に、全米の国民に信頼性が高く手頃な価格の電力網を提供することができる。
- 米国防総省 (DOD)、米情報機関 (IC)、米国家安全保障会議 (NSC)、米商務省 (DOC) 内の米国立標準技術研究所 (NIST) が主導し、Center for AI Standards and Innovation (CAISI) を含む業界と協力し、必要に応じて関連する米連邦支援研究開発センター (Federally Funded Research and Development Centers) と協力し、高セキュリティAIデータセンターの新技術標準を策定する。
- 米商務省 (DOC) 内に、産業コンソーシアムからフルスタックAI輸出パッケージの提案の募集を目的とするプログラムを創設し運用を開始する。米商務省 (DOC) がコンソーシアムを選定した後、Economic Diplomacy Action Group、米国貿易開発庁 (U.S. Trade and Development Agency)、輸出入銀行、米国国際開発金融公社 (U.S. International Development Finance Corporation) および米国務省 (Department of State, DOS) は、米商務省 (DOC) と連携し、米国が承認したセキュリティ要件と基準を満たす取引を促進するため調整を行うべきである。
AI Action Planは、今後数年間にわたるAI開発に重大な影響を与えるだろう。トランプ大統領が連邦機関に対して広範な権限を有していることから、本計画で示された政策措置への徹底した遵守が予想される。バイデン前大統領のExecutive Orderが連邦機関におけるAI施策に大きな影響を与えたように、トランプ大統領のAI Action Planは、さらに深刻で広範な影響を及ぼす可能性がある。AIに影響を受ける、または関心を持つ事業者は、本計画の実施状況を注意深く監視し、必要に応じて連邦政府と連帯すべきである。
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