Alerts 大統領令が州のAI法規を先取りして無効化し、国家的なAIフレームワークの確立を図る – 初期的な要件
Written by Stephen M. Anstey (和訳:穐場 仁)
2025年12月11日、トランプ米大統領は「人工知能に関する国家政策フレームワークの確保 (Ensuring A National Policy Framework For Artificial Intelligence)」と題する大統領令 (Executive Order) を発令した。本大統領令は、「Section 2に記載された内容を妨げる可能性がある州によるAI規制を制限することを目的」としていて、Section 2は「米国の方針は、AI国家政策フレームワークを通じて、最小限の負担でAIに関するグローバルな優位性を維持し強化することである」と規定している。
大統領令は他の指令に加え、以下のことを命じている:(i) 司法長官 (Attorney General) に対し、Section 2と矛盾する州のAI法 (State AI laws) に異議を唱えること; (ii) 指定機関及びホワイトハウス関係者に対し、Section 2に抵触する州法を評価・特定し、該当州への連邦補助金支給を制限すること; (iii) 「AI・暗号技術特別顧問 (Special Advisor for AI and Crypto) および大統領科学技術補佐官 (Assistant to the President for Science and Technology) に対し、「州のAI法に優越する統一的なAI連邦政策フレームワークを確立するための立法提案を共同で作成する」こと。
本大統領令は、2025年11月24日付の大統領令「Launching the Genesis Mission」および7月23日に発表された「America’s AI Action Plan」に続く、トランプ大統領によるAI政策の形成に向けた最新の取り組みである。この大統領令はその広範な適用範囲と、既存および予想される州法との直接的な抵触を考慮すると、本大統領令の実施は司法的な挑戦に直面する可能性が高く、また同時に連邦議会 (Congress) に対し本大統領令の撤回を求める声や、逆に本大統領令で想定する人工知能を規制する連邦法フレームワークの推進を求める声が上がるだろう。
以下は、本大統領令の実施に関する初期的な要点である。
州のAI法に異議を唱えるためのAI訴訟タスクフォース (AI Litigation Task Force) の設置
本大統領令のSection 3「AI訴訟タスクフォース (AI Litigation Task Force) 」は特に直接的である。司法長官 (Attorney General) に対し、30日以内に「AI訴訟タスクフォース (AI Litigation Task Force, タスクフォース) を設け、本大統領令section 2に定める政策と矛盾する州のAI法に異議を唱えることを唯一の責務とする」ことを要求している。これらの異議申し立ては、当該州法が州間の通商を違憲に規制していること、既存の連邦規制により排除されていること、または司法長官 (Attorney General) の判断においてその他違法であることを根拠に提起される可能性がある。
州のAI法に関する評価の公表
本大統領令は、90日以内に商務長官 (Secretary of Commerce) が、AIおよび暗号通貨の特別顧問 (Special Advisor for AI and Crypto) を含む複数の連邦当局者と協議の上、「既存の州のAI法の評価を公開」することを要求している。この評価には、Section 2に定める政策と抵触する過重な法律、ならびにタスクフォースに付託すべき法律を特定しなければならない。本大統領令は、評価において少なくとも「AIモデルに真実な出力を変更させることを要求する法律、またはAI開発者やディベロッパーにアメリカ合衆国憲法修正第1条 (First Amendment) やその他の憲法規定に違反する形で情報を開示または報告を強制する可能性がある法律を特定すること」を明記している。一方、本大統領令は政策に沿ったAIの革新を促進する州法を評価の中で特定することも認めているが、この「良い行動者 (good-actor) 」指定の実践的目的や影響については依然として不明確なままである。
大統領令に抵触する法律を有する州への連邦資金の制限
本大統領令のSection 5「州資金の制限 (Restrictions on State Funding) 」では、州のAI関連立法を条件として連邦資金を交付するとする潜在的に重要な歳出上の誘導手段を規定している。
商務長官 (Secretary of Commerce) は90日以内に、ブロードバンド衡平性・アクセス・配備 (Broadband Equity, Access, and Deployment, BEAD) プログラムの下で、残余資金に対する州の受給資格を定める政策通知を発行するよう指示されている。この通知に基づき、評価でSection 2と抵触するAI法を有すると認定された州は、BEADプログラムに基づく資金のうちインフラ構築 (deployment)用途ではないものを受け取る資格を失う。さらに重大な影響を及ぼす可能性がある点としては、「すべての省庁および機関に対し、裁量権に基づく助成プログラムを評価し、[…] 当該助成を本大統領令の方針に抵触するAI法を制定しないことを条件とするか、[…] あるいは既にそのような法律を制定している州については裁量資金受給期間中に当該法を施行しない旨の拘束力ある合意を関係機関と締結することを条件とする」よう要求している。連邦政府による州への助成金規模、特に医療、エネルギー、輸送、インフラ分野における規模を考慮すると、この規定は州政府だけでなく、当該助成金に依存する個人や団体にも重大な懸念を生じさせる可能性が高い。
統一的な連邦AI政策フレームワークを実施するための連邦立法の確立
「本大統領令で定める政策に抵触する州のAI法を優越する統一的な連邦AI政策フレームワークを確立するため立法提案を準備する」という本大統領令の指示は、非常に重要である。このフレームワークは、以下の事項に関する州のAI法には優越しない;「(i) 子どもの安全に関する保護、 (ii) 一般的に適用される認可改革を除くAI計算およびデータセンターインフラ、(iii) 州政府によるAIの調達および使用、(iv) その他、必要に応じて決定される事項。」
本大統領令は、包括的な連邦AIフレームワークの欠如が州レベルの規制のパッチワーク化 (patchwork) を助長してきた点を正しく指摘している。しかし、行政 (Administration) がかかるフレームワークを提案できる一方で、優越権を有するAI立法の策定と制定は最終的に議会 (Congress) に委ねられている。特にAIの影響を受ける分野の広範さを考慮すると、そのような立法の策定と可決のプロセスは複雑で、時間がかかり、政治的にも困難を伴う可能性が高い。
次のステップ
本大統領令に対する州、企業、その他の関係機関の反応は重大なものとなる見込みであり、キルパトリックは引き続き本大統領令の実施に伴う主要な側面や、これに伴う法的・政策上の対応に関する追加情報および最新動向を提供していく予定である。当面の間は、関係者は各機関の実施状況、訴訟の展開、関連する立法動向を注視すべきである。
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