Alerts 「実質的類似」か「明白な相違」か?「通常の観察者」テストをめぐる対立

2026年02月20日

Written by Steve R. Borgman and Andrew N. Saul  (和訳:穐場 仁)

Range of Motion Products, LLC v. Armaid Company Inc., No. 2023-2427 (Fed. Cir. Feb. 2, 2026)

注目されていた意匠特許 (design patent) に関する判決において、米連邦巡回控訴裁判所 (CAFC) はArmaid側に有利な非侵害の略式判決 (summary judgment) を支持し、特許された”Body Massaging Apparatus” (USD802,155) の範囲は機能的要素を除外した狭い解釈が適切であり、被告の装置が実質的に類似 (substantially similar) していると合理的な陪審が判断することは不可能であると判断した。

反対意見 (dissenting opinion) において、Moore首席判事は、裁判所が両デザインが「実質的に類似しているのか」ではなく、「明らかに異なっているか (plainly dissimilar)」を裁判所が判断のよりどころとしたことに意義を唱え、後者の基準は通常の観察者 (ordinary observer) の視点を類似点から相違点に微妙にシフトさせていると主張した。

本件は機能性が意匠の範囲に与える影響を再確認させる一方、強い反対意見は意匠侵害の分析手法が再検討される可能性も示唆している。

多数意見 (Majority opinion):機能性はデザインの範囲を大幅に制限しうる

Cunningham判事が執筆した多数意見は、侵害分析を行う前に登録された意匠の装飾的側面 (ornamental aspect) と機能的側面 (functional aspect) は区別しなければならないと強調している。特許された装置の主な特徴-特に両側アームの「クラムシェル (clamshell)」形状-は、機能的に決定されたものと判断された。裁判所は以下の基準に依拠している:

・関連した先行技術の四肢マッサージ機能に関する特許

・レバレッジと性能上の利点を謳うマーケティング資料

・代替デザインが実用性に影響を与えることを示す証拠

以下に、クレームされた意匠、侵害主張される製品、及び裁判所が参照した先行技術の実用新案を具現化する先行製品の図面を示す。

クレームされた意匠
(D’155 Patent)
侵害主張される製品
(Armaid2)
先行技術の実用新案を具現化する先行製品
(Armaid1)
                                                                           

登録された意匠の特徴の多くは機能によって制約されていたため、裁判所は意匠の範囲もそれに応じて狭いと判断した。

通常の観察者テスト (ordinary observer test) に基づき、侵害を主張された製品とクレームされたデザインを比較した結果、裁判所は機能的要素を考慮した後に両デザインは「明らかに異なっている (plainly dissimilar)」と結論付け、したがって非侵害の略式判決 (summary judgment) が正当であると判断した。ヒンジ構造、比率、分割、全体的な視覚的印象の違いは、CAFCが非侵害の略式判決を支持するのに十分であった。

特筆すべきは、裁判所が、単に製品を並べて提示するだけで陪審員による判断に付すべき争点が生じる、との原告主張を退けた点である。

反対意見 (Dissenting opinion) : 裁判所は「実質的類似性 (Substantial Similarity)」テストから逸脱したのか?

Moore首席判事は反対意見を表明し、「実質的な類似性 (substantial similarity)」の判断は陪審員が行うべきであったと主張した。
反対意見は下記のようないくつかの広範な懸念を提起している。

・CAFCが「実質的類似性 (substantial similarity)」テストではなく「明らかに相違する (plainly dissimilar)」テストを採用したことで、焦点が類似点から相違点へと微妙にシフトしている。

・最高裁のGorham v. Whiteで定めた当初のテストは、デザインが全体的な外観において実質的に類似しているかどうかを問うものであり、十分に区別可能かどうかを問うものではない。

・近年、意匠訴訟は陪審による審理ではなく、略式判決 (summary judgment) で解決されるケースが増加している。

反対意見は、裁判所が侵害判断基準の枠組み、特に類似意匠の事案における略式判決 (summary judgment) の役割を再検討すべきだと示唆している。

Gorham v. Whiteで争点となった食器デザインの視覚的比較を簡単にみると、差異点と類似点の両方を見出せること、また機能的に関する議論の余地があることが明らかになる:

Moore判事はまた、以下の子供向けパズルを用いてこの点を説明し、普通の観察者 (ordinary observer) が特に相違点を見つけるよう求められた場合、類似点が見落とされる可能性があることを指摘した:


この判例が意匠権にとって重要な理由

本判決は意匠権者に対し、以下の実践的教訓を提供している:

1.機能性証拠が保護範囲を狭める可能性がある
関連する特許、技術的制約、マーケティング資料は、デザイン保護の範囲を大幅に制限し得る。

2.実線要素も機能的解析の対象となる
実線で特徴を書いてあっても、裁判所がそれらを機能性に基づくものと判断する可能性は排除できない。

3.先行技術に近いデザインは保護範囲が狭まる
デザインが先行技術とわずかに異なる場合、侵害製品における微小な差異がより重視される可能性がある。

4.略式判決 (summary judgment) は依然として強力な防護手段である
機能的要素を除外した後、装飾的差異が顕著である場合、裁判所は略式判決において非侵害を継続的に認めている。

5.法理は確定していない
この反対意見は、さらなるCAFCや大法廷 (en banc) レビューによる再審理につながる可能性がある継続的な法理論争を浮き彫りにしている。

戦略的考慮

製品デザインに投資する企業向け:

・機能的性能だけでなく、装飾的柔軟性を示す実績を構築すること。

・機能的利点を強調するマーケティング資料は、後の権利行使範囲を狭める可能性があることに留意すること。

・先行技術との接近性や機能的重複に注意を払いながら、意匠ポートフォリオを評価すること。

・略式判決 (summary judgment) リスクを含む権利行使戦略を早期に検討すること。

本判決は、意匠保護における形態と機能の進化するバランス、そして出願から訴訟に至る戦略的計画の重要性を浮き彫りにしている。

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