Alerts クレームを広げた分だけ実施可能にしなければならない-米連邦最高裁判所(Supreme Court)、Amgenの遺伝子レベル抗体クレームは実施可能性(enablement)を欠くと判断 – The More You Claim, The More You Must Enable – The Supreme Court rules that Amgen’s Genus-Level Antibody Claims Lack Enablement
Written by Stuart E. Pollack Ph.D. and Christopher P. Damitio (和訳:穐場 仁)
2023年5月18日木曜日に発表された全員一致の判決において、米連邦最高裁判所(Supreme Court)は、高コレステロールを治療するために使用されるAmgenの抗体療法薬に関するクレームは適切に実施可能とすることができないとして、製薬会社Amgenが所有する2つの特許のクレームを無効にした連邦巡回控訴裁判所(Federal Circuit)決定を支持した。無効にされた米国特許第8,829,165号のクレーム9ならびに29、および米国特許第8,859,741号のクレームは、ヒトの体内に天然に存在するタンパク質であるPCSK9の「スイートスポット(sweet spot)」に結合し、それを不活性化する数百万の抗体をカバーするものであった。過活動PCSK9は、高コレステロール、心疾患、および脳卒中に関連している。今回の最高裁の判決により、Amgenと、Amgenが2014年に今は無効となったクレームの侵害を訴えて提訴した競合会社Sanofiとの間の訴訟は終結した。
Amgenは、米連邦最高裁判所(Supreme Court)での議論において、自社の特許が治療抗体を構成する数百万の潜在的なアミノ基を含む化合物をカバーしているが、開示しているのは潜在的な組合せである26の特定の配列のみであることを認めている。Amgenは、開示されていない組合せについては、特許の明細書が研究者に他の治療的に存在可能な抗体を同定するための「ロードマップ」を提供しているため適切に実施可能である、と主張した。Amgenは、26の開示された組合せに小さなアミノ酸変化を加え、PCSK9スイートスポットへの結合親和性について、これらの新規配列を試験するように研究者に指示する明細書の記載を指摘した。
最高裁は、Amgenがその明細書に提示した「ロードマップ」は、オリジナルの26の抗体の発見につながったのと全く同じ試験プロトコルを研究者に課すにすぎないとして、その主張を退けた。最高裁は、Amgenが明細書で行ったことは、当業者に「あらゆる機能的実施形態に共通する質」を特定することなく、「無作為の試行錯誤の発見」に従事するよう指示することであり、35 U.S.C. 112.の実施可能性(enablement)要件を満していないと判示した。その際、最高裁は争われているクレームの様々な実施形態を作成し試験するのに必要な「累積的な期間及び労力」は、実施可能性(enablement)を判断するための適切なテストではないことを強調した。
最高裁はAmgenの特許を、「100のタンブラーを持ち、それぞれが20の異なる位置に設定できるコンビネーション・ロック」と例えた。Amgenは、「全て成功した組合せ」を主張する一方で、当技術分野の他の人々に「多数の組合せを無作為に試し、成功した組合せを記録する」よう指示することにより、機能的組合せを生み出す、いわゆる「ロードマップ」を提供した。しかし、最高裁が説明したように、単純な試行錯誤ではなくそれを超える成功への期待(ロードマップ)があったとしても、「他の人々が機能的な組合せを製造し使用(make and use)することを可能とするものではない」。最高裁はまた、連邦巡回控訴裁判所(Federal Circuit)が属全体をカバーするクレームに、より狭い「種クレーム」に適用される高い基準を不適切に課したとするAmgenの主張も却下した。最高裁は、連邦巡回控訴裁判所(Federal Circuit)が全てのクレームに単一の実施可能性(enablement)基準を適切に適用したが、連邦議会(Congress)が意図した「広くクレームすればするほど、より多くを実施可能にしなければならない」ことを再確認した。
弊所ロークラークで、University of California, Davis’s, Business Law JournalのエディターであるCecelia Riveraが本記事の内容に貢献しています。
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