Alerts ソーシャル・ディスタンシング下での事業継続戦略としての電子署名と電子交付
Written by Joshua S. Ganz, Christina M. Gattuso, Jon Neiditz, Amanda M. Witt, Vita E. Zeltser and John M. Brigagliano (和訳:穐場 仁)
注:以下の情報は、新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的流行が引き続き継続しているため、説明の追加を含めたアップデートが必要となる可能性がある。
アップデートについては、弊社のCOVID-19タスクフォースページ、および/またはメールをご確認ください。
米国の法律は2000年以降電子署名の利用を広く可能にしているが、多くの企業はその業務全般にわたって電子署名の利用を完全には採用していない。
電子署名の利用に対する抵抗は、実際の法的障害ではなく、歴史的な実務に基づくことが多く、金融、銀行、不動産、保険、企業ガバナンスに関する文書など、特定の文書に関して特に顕著である。
新型コロナウイルス(COVID‐19)に対するリスク緩和戦略を考えると、ほとんどの人員と顧客が自宅からビジネスを行っている現在、多くの企業は遠隔から文書を締結する必要がある。
電子署名を利用することで、遠隔地の人員や顧客による文書の締結を合理化し、対面ビジネス取引が実現不可能な場合でもビジネスの継続性を提供することができる。
このように、企業は、実際の署名(「ウェットインク」署名)を必要とする現在のプロセスが電子署名に置き換えられる可能性があるかどうかを評価すべきである
また、「法律」ではなく「歴史」が妨げている企業や政府の分野では、危機が終わった後であっても旧来の方法に戻ろうとしないだろうと思われるため、企業は新しい方式を長期的に採用することができる。
電子署名に関する法律が各国で大きく異なることに注意を要する。そのため、署名者が米国以外に存在するような文書の締結を日常的に行っている企業は、多数の国に跨った分析を行わなければならない。
例えば、米国外の世界の多くの地域で適用される法律では、特定のセキュリティプロトコルを使用する電子署名の一形式であるデジタル署名の使用を要求している
世界のある地域では、多くの種類の取引について電子署名が技術的に認められているが、米国よりも面倒で柔軟性の低い手続を必要としている
1. 米国の電子署名法(ESIGN1、及びUETA2に基づくものを含む同等の州法)により、当事者は、ほとんどの種類の商業文書を締結するために電子署名を使用することができる。
ESIGN (電子署名を規制する連邦法)とUETA (47州とコロンビア特別区でいくつかの修正を加えて採択された電子署名に関するモデル州法3)は、電子署名が電子形式であることによってのみ署名の法的効力を否定できないと述べることによって、電子署名に「ウェットインク」署名と同じ法的地位を付与している。これらの法律は、一般に、文書が(1)ESIGNまたはUETAの明示的な例外に該当するか、または(2)実質的な法律が「ウェットインク」署名を使用することを当事者に要求するか、または他の当事者の物理的存在下で文書を執行することを当事者に要求しない限り、「ウェットインク」署名なしで当事者がほとんどの文書を締結することを可能にしている。
ESIGNおよびUETAによって明示的に除外される文書には、遺言書類(遺言書、遺言補足書および信託など)、家庭法の事項、裁判所の命令または通知、一定の通知、および文書が米国統一商法典(「UCC」)に準拠する範囲内の文書(物品の販売およびリースを管轄し、ESIGNおよびUETAの範囲内にあるUCC第2条および第2A条を除く)が含まれる。
UCCが適用される文書(第2条および第2A条を除く)については、当事者は、UCC内の関連規定を評価し、当事者が電子署名を付した文書を締結することができるかどうかを決定しなければならない。
なお、電子署名の有効性は、「ウェットインク」署名と同じ理由、すなわち、本人の無能力、錯誤、詐欺、強迫、偽造の理由で争うことができる。
2. ESIGNとUETAはテクノロジーニュートラルである。
ESIGNおよびUETAは「ウェットインク」署名よりも電子署名を好むものでもなく、有効な締結のために特定の形態の電子署名を定めてもいない。
いずれの形態においても、「電子署名」とは、「電子的な音、シンボル、またはプロセスであって、契約または他の記録に付随または論理的に付随するもの」を意味するため、「有効な署名を作成するために使用される必要がある特定の技術は存在しない」とUETAの公式コメントに記載されている。
スキャンした、又は電子PDF上の署名は、取引の関係者が電子署名の使用を同意している限り、電子署名として認められる。
「承諾する」をクリックするか、そうでなければ同意を明示するか、または同意を口頭で明示することも、有効な電子署名を構成することができる。
3. 電子公証(Electronic Notarization)あるいは遠隔公証(Remote Notarization)が許容されるか否かは、州ごとに検討が必要である。
ESIGNおよびUETAは、当事者が、適用される州法によって要求される情報を提供するためすべての要件を満たすことを条件として、当事者が電子プロセスを通じて公証の要件を満たすことを可能にしている
従って、当事者は、電子公証(electronic notarization)が、特定の州において、UETAまたはESIGNの対象となる文書に適用可能かどうかを判断するために、州の公証人法が、当事者に対し、公証人の証明書や「ウェットインク」での印章など必要な情報を提供することを積極的に要求しているかどうかを検討しなければならない。
遠隔公証(Remote Notarization) (例えばライブビデオを通じて当事者間で双方向的に行われる公証)が、所定の管轄において許容されるかどうかを決定するためには、当事者は、州の公証人法が署名者が公証人の面前に実際に存在することを積極的に要求しているかどうかを判断する必要がある。
遠隔公証(Remote Notarization)が認められるということをより確実にするために、そのすべてが実施されているか完全に施行されているわけではないが、現在の危機以前に4、22の州が遠隔での公証を可能とする法律を通過させた。
通常、対面での公証が必要なニューヨーク州では、Andrew Cuomo知事が2020年4月18日まで遠隔公証(Remote Notarization)を有効とする行政命令を発行した。
かかる行政命令においては、署名者が物理的にニューヨーク州に存在することなど、遠隔公証(Remote Notarization)を有効とするための手続要件が定められている。
連邦レベルでは、Mark Warner上院議員とKevin Kramer上院議員が、「遠隔・電子公証を用いた取引を安全かつ可能とする2020年の法律(SECURE)」を提案している。この法律は、全国的な遠隔公証(Remote Notarization)の枠組みを定め、これを可能にするものである
4. 消費者取引に関する特別な考慮事項: 消費者通知の電子交付
(ビジネス対ビジネスの文脈ではなく)消費者向きの電子契約プロセスを設計する場合、一定の消費者保護法規 – 例えば、保険取引またはその他の財政取引に関するものは、消費者との取引においてまたは消費者との取引の前に、消費者に「書面で(“in writing”)」提供されることを要求する – を念頭に置く必要がある。
ESIGNは、法律または規則により「書面で(“in writing”)」消費者に提供することが義務づけられている開示については、一定の条件を満たす限り、電子的手段のみを通じて提供することを明示的に許可している。
これらの条件には、(i)電子的に開示を受けることについての消費者の同意を得ること、(ii)要求された開示を電子的に受けることについての消費者の同意を証明するために一定の開示を消費者に提供すること、(iii) 販売取引の中で、電子的に提供される予定の開示が法令で要求されるよりも前に、電子的に開示を受けることに消費者の同意を得ること、 (iv)消費者が同意の対象であった開示の記録に後でアクセスするための仕組みを提供すること、が含まれる。
ESIGNの電子開示要件を遵守しない場合、根拠となる取引(例えば、保険の申込、または、最終的に発行された保険証券)が無効または無効とすることができるようになることはないが、適用法に従って必要な開示(差替通知(replacement notice)など)を提供しなかった場合には、規制上の制裁を受ける可能性がある。
また、開示が効果的に行われていないとみなされる場合には、消費者が利用できる民事上の救済措置があるかもしれない。5
5. プロセスは重要であり、証拠の許容性に目を向ける。
電子契約、電子署名、電子交付のプロセスを設計・実施する場合、このプロセスの目標は、将来のある時点で、証拠調べに耐えうる契約書や記録を作成することにあることを留意する。
プロセスは、特定の契約状況に特有のリスクに対処するように注意深く設計されるべきである。
最低限、電子契約プロセスを運用する場合は、契約者の身元、および、署名または提供される文章の内容を認証する方法を検討する必要がある。
脚注
1 Electronic Signatures in Global and National Commerce Act (ESIGN), 15 U.S. Code §§ 7001 et cet.
2 Uniform Electronic Transactions Act (UETA).
3 イリノイ州、ニューヨーク州、ワシントン州は、UETAを採用していない。
ニューヨーク州とイリノイ州は、それぞれ独自の電子署名法を採用している。
ワシントン州は、州独自の電子署名法を2019年に撤廃し、ESIGNの広範な適用と電子署名を促進する他州の法律の更新を当てにしている。
4 The National Notary Associationは、これらの法律と適用状況を下記ホームページに一覧表示している。 https://www.nationalnotary.org/notary-bulletin/blog/2018/06/remote-notarization-what-you-need-to-know
5 B2Cの文脈でESIGNを具現化する者は、第1章の第2段落で参照されている除外事項も必ず確認する必要がある。
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