Alerts 人工知能に関する米大統領令(Executive Order)の知財的側面 – Intellectual Property Developments from the U.S. Executive Order on Artificial Intelligence

2023年11月13日

Written by Alexander J. BorovskyZachary S. KeltonJoseph PetersenStephen M. Anstey and James A. Trigg   (和訳:穐場 仁)

2023年10月30日に発行された、「人工知能の安全、安心かつ信頼できる開発と使用に関する大統領令(Executive Order on the Safe, Secure, and Trustworthy Development and Use of Artificial Intelligence, EO)」には、人工知能(AI)の開発および使用に関連する多くの取り組みが盛り込まれている。本記事では、知的財産(IP)に関するEOの重要な側面に焦点を当て、組織のAI関連IPリスク軽減の取り組みや、関連する内部プロトコルやガードレール(guardrails)の開発に役立つ情報を提供する。注目すべきは、EOの8つの指針と原則(EO’s eight guiding policies and principles)の1つ(責任ある革新、競争、コラボレーションの促進)は、発明家とクリエイターを保護するための今までにない知財問題や他の問題への取り組みが、特に含まれていることである。1 AIにより直接的または間接的に影響を受ける団体は、EOに明記された各省庁のタイムラインを認識し、各省庁がコメントの要求を通じて知財関連AI規制策定についてパブリックの意見を求めることを想定するべきである。

AIの特許性に関する今後のガイダンス
米大統領令(EO)の重要な知的財産関連の側面は、AIおよびAIが生成したコンテンツの特許性に関する問題を明確にすることである。2 EOは、米商務省知的財産担当次官(Under Secretary of Commerce for Intellectual Property)と米特許商標庁(United States Patent and Trademark Office, USPTO)長官に対し、いくつかの関連する取り組みを行うよう求めている。3 EOの日付から120日以内に、両者は、USPTOの特許審査官と出願人に対して、発明者の地位(inventorship)と、発明プロセスにおける生成AIを含むAIの使用についてガイダンスを公表しなければならない。このガイダンスには、AIシステムが発明プロセスにおいて異なる役割を果たす具体例や、各例で発明者の地位(inventorship)の問題がどのように分析されるかが含まれるべきである。さらに、EOの日付から270日以内に、両機関は、AIと知的財産の交差する点に関する他の考慮事項に対処するために、USPTOの特許審査官と発明者に対して追加ガイダンスを発行しなければならない。この追加ガイダンスには、AIや重要な新興分野のイノベーションに対応するための特許適格性に関するガイダンスのアップデートも含まれる。EOに基づくこのガイダンスは、AIおよびAIが生成したコンテンツの特許性を巡る問題を明確にし、民間セクターのAI関連特許戦略に関する情報を与えるものと思われる。

米著作権局(U.S. Copyright Office)による著作権研究
米大統領令(EO)のもう一つの重要な知的財産権の要素は、AIが生成するコンテンツの保護範囲やAIトレーニングにおける著作物作品の取り扱いなど、AIが提起する著作権問題に対処している。米著作権局(U.S. Copyright Office)は、著作権法の現状を分析し、AIに関連する未解決の問題を特定し、議会が行動を起こす可能性のある分野を評価する関連研究(study)を積極的に実施している。EOでは4、この研究の公表から180日以内、またはEOから270日以内のいずれか遅い日付までに、米商務省知的財産担当次官(Under Secretary of Commerce for Intellectual Property)とUSPTO長官は、米著作権局長官(Director of the United States Copyright Office)と協議し、かかる問題に対処する著作権およびAIに関連する潜在的な行政措置について米大統領に推奨事項を示す責任も負っている。

AI関連の知的財産リスクを軽減するための民間セクターの支援
米大統領令(EO)は、AI開発者がAI関連のリスクと戦うのを支援し、民間セクターに関連する今後のガイダンスを提供することを目指している。EOは、米国土安全保障長官(Secretary of Homeland Security)に対し、国家知的財産権調整センター長官(Director of the National Intellectual Property Rights Coordination Center)を通じ、米司法長官(Attorney General)と協議の上、180日以内にAI関連の知的財産リスクを軽減するプログラムを策定するよう求めている。EOはこのプログラムについて、次の5つの要件を定めている。(1) AI関連の窃盗の報告を収集・分析し、かかる事件に関する調査や取り締まりをするための適切な人員を確保すること、(2) 該当する連邦、州、地方機関との情報共有および業務共有ポリシーを実施すること、(3) AI関連の知的財産窃盗のリスクを緩和するための民間セクターを支援するためのガイダンスとその他適切なリソースを開発すること、(4) AI開発者および法執行機関関係者と情報およびベスト・プラクティスを共有し、事例を特定し、利害関係者に現行の法的要件を通知し、知的財産違反に関するAIシステムを評価するとともに、その緩和戦略とリソースを開発すること、(5) 米知的財産執行調整官(Intellectual Property Enforcement Coordinator)を支援し、AI関連問題に対処するため、知的財産に関連する行政の共同戦略プラン(Joint Strategic Plan)を更新すること、である。民間セクターは、AI関連の知的財産窃盗のリスクの緩和を支援するための今後のガイダンスと、知的財産に関する組織のAIガバナンス戦略に役立つ可能性があるAI関連の問題に対処するための共同戦略プランが、どのように更新されるかに細心の注意を払う必要がある。

次のステップ
AIに関連する米大統領令(Executive Orders)、法律、規制が、継続的に発展変化し続ける中、AIを利用する者やAIに影響を受ける者は、必要なコンプライアンスの枠組み、適用可能な既存の規制、新しいAI特有の規制の制定、関連法案の草案と成立に向けた努力、連邦政府からの意見募集と規則制定、執行上の懸念、そして使用事例の拡大について認識しておく必要がある。

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Kilpatrick – AI Regulatory and Legislative Insights
Alexander J. Borovsky, Joshua S. Ganz, and Meghan K. Farmer – The U.S. Executive Order on Artificial Intelligence Is Not Only for Uncle Sam: Key Components of the Executive Order and Potential Impact on the Private Sector
Stephen M. Anstey – Artificial Intelligence – White House Issues Sweeping Executive Order on AI as Congress and Executive Agencies Continue to Take Action
Stephen M. Anstey – Artificial Intelligence – Congress, Federal Agencies, and the White House Solicit Information and Take Action
Stephen M. Anstey – Bipartisan Framework for U.S. AI (Sens. Blumenthal and Hawley) and Senate Hearing on Oversight of AI: Legislating on Artificial Intelligence
Jennie L. Cunningham – NYC Tackles AI and Automated Decision-making in Employment and Recruiting 

 

See Section 2(b) of the EO.
昨年、米連邦巡回控訴裁判所(U.S. Court of Appeals for the Federal Circuit)は、Thaler v. Vidal, No. 21-2347 (Fed. Cir.)において、AIソフトウェアが特許出願の発明者として記載されるかどうかについての判決を発表した。Thaler事件では、米特許商標庁(United States Patent and Trademark Office, USPTO)は、米特許法(U.S. Patent Act)は発明者を自然人に限定していると判示しているため、AIシステムが唯一の発明者として記載された2つの特許出願を認めなかった。
Section 5.2(c) of the EO.
Section 5(c)(iii) of the EO.
Section 5.3(d) of EO.