Alerts AIの支援を利用した発明の発明者に関するUSPTOガイダンスは、人間による「大きな貢献」の必要性を強調 – USPTO Guidance on the Inventorship of AI-Assisted Inventions Highlights Need for Significant Human Contributions

2024年02月16日

Written by Michael S. Pavento and Ruming Wen Ph.D.   (和訳:穐場 仁)

米国特許商標庁(USPTO)は、このほど、2024年2月13日から適用されるAIの支援を利用した発明(AI-Assisted Inventions)に関する発明者の地位(inventorship)に関するガイダンス (Inventorship Guidance for AI-Assisted Inventions, Guidance)を新たに発行した。1 本ガイダンスは、2023年10月30日にバイデン米大統領が発行した、人工知能の安全、安心かつ信頼できる開発と使用に関する大統領令(Executive Order on the Safe, Secure, and Trustworthy Development and Use of Artificial Intelligence (AI) )に基づくものである。本ガイダンスは現在の取り扱いの状況を確認し、詳細を加えたものである。

本ガイダンスはまず、AIを米国特許出願の発明者または共同発明者とすることができるか否かを取り上げ、USPTOおよび裁判所が、Thaler v. Vidalで同じ問題を検討したことを指摘している。2 その事件では、Thaler氏はAIモデルを発明者とし、自身を承継人として米国特許出願16/524,350を出願した。USPTOは、発明者が自然人でなければならないことに基づいて、2020年5月に出願を拒絶した。バージニア州東部連邦地裁と連邦巡回控訴裁判所(CAFC)は、USPTOの判断に合意した。

発明者は自然人でなければならないという立場は、35 U.S.C. 100(f)の発明者の定義である「発明の主題を発明または発見した個人」と一致している。本ガイダンスは、発明者の地位の分析は、人間の貢献に焦点を当てるべきであるとしており、それは、特許が人間の創作性を促進し報酬を与えるために機能するからであると説明している。したがって、機械やAIシステムを発明者または共同発明者と指定する特許出願は、不適切な発明者の記載であるとして拒絶される。

一方、本ガイダンスでは、自然人が発明に大きな貢献(significant contribution)をした発明に対して、特許保護が求められる可能性があることを明確にしている。AIの支援を利用した発明は、「不適切な発明者として類型的に特許性がないものではない」。本ガイダンスでは、 Pannu v. Iolab Corp.において明示された発明者の地位の要因を考慮し、USPTOは各発明者が:(1) 発明の着想や実施化に何らかの重要な方法で貢献したこと3 (2) クレームされた発明に対する貢献の質が、その貢献が完全な発明の次元に照らして、取るに足らないものでないこと、及び (3) 真の発明者に対して、周知の概念及び/又は現在の技術水準を単に説明する以上のことが求められる。4

本ガイダンスは、AIの支援を利用した発明者の地位は、クレームごと、事案ごとに判断されなければならないことを指示している。少なくとも一人の自然人が、特許出願の各クレームに対して大きな貢献をしなければならない。ガイダンスは、大きな貢献の判断に明確なテストがないことを認めた上で、AIの支援を利用した発明のPannu要因の適用に役立つ原則の非網羅的リストを提供している。

  • AIシステムに解決すべき問題を単に提示するだけでは不十分である。しかし、自然人が特定の問題を想定してプロンプトを作成し、AIシステムから特定の解決策を引き出すことができれば、大きな貢献を示すことができる可能性がある。
  • AIシステムのアウトプットを発明的であると単に認識し、評価するだけでは不十分であり、特に、そのアウトプットの特性や有用性が当業者に明らかな場合にはなおさら不十分である。 しかし、自然人がAIシステムのアウトプットを利用し、そのアウトプットが発明につながるような大きな貢献をした場合には、自然人による発明者の地位が示される可能性がある。
  • 特定の解決策を引き出すために、特定の問題を考慮してAIシステムを設計、構築、またはトレーニングすることが、AIシステムを用いて創出された発明に大きく貢献をしていれば、発明者の地位であることを正当化する可能性がある。
  • 単にAIシステムを所有または監督しているだけでは、それだけで自然人を発明者にすることはできない。

要するに、本ガイダンスは、AIの支援を利用した発明の発明者の地位を決定するための「大きな貢献」テストの大まかな概略を提供している。いくつかのシナリオ例が提供されており参考になるが、未回答の問題も多く残されている。これらの問題に対する法律やUSPTOの見解は、裁判所が関与せざるを得ない状況の中で確実に進化していくだろう。訴訟当事者が、クレームされた発明の着想におけるAIの役割についてのディスカバリに大きな労力を傾けることは容易に予想できる。

したがって、今後、特許保護を求める発明者とその雇用主にとって、発明創造プロセスにおけるAIの使用を慎重に文書化することが重要となる。企業は、発明の着想及び/または実施化に関して該当する場合には、発明者に対してAI使用の記述を求めるよう発明開示フォームへ質問を追加することを検討すべきである。実務者は、同様に、発明開示のミーティングにおいて、各発明のAIの使用またはAIに対する依拠に関する情報の提供を求める習慣を身につけるべきである。

また、本ガイダンスでは、発明に対するAIの貢献をUSPTOに開示する必要がないことにも留意すべきである。ただし、実務者及び出願人は、発明者の宣誓書(oath)または宣言書(declaration)には、宣誓書または宣言書を提出する発明者または共同発明者名を法律上の氏名を特定し、かつ、宣誓書または宣言書を提出する出願において、クレームされた発明のオリジナルの発明者またはオリジナルの共同発明者が、宣誓書または宣言書を提出した人物であると信じる旨の陳述書が含まれていなければならないことを、常に留意しなければならない。発明者の宣誓書または宣言書は、「§ 1.66に基づき、又は当該宣言書または陳述書における故意の虚偽陳述書は、18 U.S.C. 1001に基づき、罰金もしく5年以下の拘禁、又はその両方により処罰されることを確認した上で、執行(署名)されなければならない」。5

最後に、USPTOは2024年5月13日まで本ガイダンスに関するパブリック・コメントを募集しており、その後、本ガイダンスを修正し、さらなるガイダンスを発行し、または追加例を発行する可能性があることに注目したい。またUSPTOは、米国東部時間3月5日1:00-2:00 pmにパブリック・ウェビナーを実施し、質問と懸念に答える予定である。

進化するAI支援発明の課題についてご質問等ございましたら、弊所Michael S. PaventoまたはLeo R. Wenまでお問い合わせください。

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Footnotes

USPTOは「AIの支援を利用した発明(AI-assisted Inventions)」という用語を、「AIを使用する発明、およびAIによって開発される発明」という意味で使用している。See, e.g., Request for Comments on Patenting Artificial Intelligence Inventions, 84 FR 44889 (August 27, 2019).
2 Thaler v. Vidal, 43 F.4th 1207, 1213 (Fed. Cir. 2022), cert denied, 143 S. Ct. 1783 (2023).
3 USPTOは、「主な質問は、誰が発明を思いついたかである」と念を押している。発明の実施化それ自体は、一般的にこの質問に無関係である。MPEP 2109(II) (citing Fiers v. Revel, 984 F.2d 1164, 1168 (Fed. Cir. 1993)).”
4 Pannu v. Iolab Corp., 155 F.3d 1344, 1351 (Fed. Cir. 1998).
5 37 CFR § 1.63
6 https://www.uspto.gov/about-us/events/inventorship-guidance-ai-assisted-inventions-webinar