Alerts CAFC、「明白な相違 (Plainly Dissimilar)」という意匠類比の判断基準を維持
Written by Steve R. Borgman and Andrew N. Saul (和訳:穐場 仁)
Range of Motion Products, LLC v. Armaid Company Inc., No. 2023-2427 (Fed. Cir. Aug. 11, 2026)
2026年初め、弊所のLegal Alertにて Range of Motion Products, LLC v. Armaid Company Inc.における米連邦巡回区控訴裁判所 (CAFC) の合議体 (panel decision) による意見が分かれた判決について考察した。同判決は、手持ち式マッサージ器の意匠特許について非侵害の略式判決 (summary judgment) を認めたものである。合議体は、機能的特徴を考慮した上で、被告製品には明白な相違 (plainly dissimilar) があると判示した。これに対しChief Judge Mooreは、通常の観察者 (ordinary observer) に関する問題は陪審員の判断に委ねられるべきであると主張した。
2026年8月11日、CAFCは合議体による再審理 (panel rehearing) および合議体全裁判官による再審理 (rehearing en banc) の双方の申立を却下し、2月の合議体判決を維持した。再審理に関する決定は、当初の意見の相違をさらに鮮明にし、関連する課題を付け加えた ― すなわち、登録された意匠の特徴が装飾的 (ornamental) ではなく機能的 (functional) であるかどうかを判断すべきは誰なのか、という点である。
裁判所は合議体判決 (Panel Decision) を維持
大合議 (en banc) による審理を求める申立は却下された。Judge Cunninghamは、Judge Hughesが同意する形で、却下に同意した。Chief Judge Mooreは、Judge Reynaに同意する形で、詳細な反対意見 (dissent) を提示した。Judges Stoll及びJudges Starkも反対意見を示したものの、意見は示さなかった。Judge Newmanは審理に参加しなかった。したがって、審理に参加した裁判官のうち4名が却下決定に公に異議を唱えたが、書面による反対意見に加わったのはChief Judge MooreとJudge Reynaのみであった。
本決定は、新たな大合議 (en banc) による判決 (merits decision) ではなく、2名の判事による賛成意見は全裁判所の見解を代表するものではない。しかし、実務的な結果は明らかである。すなわち、先例である合議体による判決 (precedential panel opinion) と、既存の略式判決 (summary judgment) の枠組みは引き続き有効である。
補足意見:「明白な相違 (Plainly Dissimilar)」は異なる基準ではない
Judge Cunninghamは、Egyptian GoddessケースがGorham v. Whiteで確立された通常の観察者テスト (ordinary observer test) を覆したとする主張を退けた。同補足意見によれば、実質的類似性 (substantial similarity) を判断するには、類似点と相違点の両方を考慮することが必然的に求められ、その際、全体的な視覚的効果が依然として決定的な要素となる。明らかな相違 (plainly dissimilar) という表現は、単に合理的な陪審が侵害を認定することがあり得ない事例を特定するためのものである。
また補足意見は、真の争われる事実関係 (genuine factual dispute) が存在しない場合における略式判決 (summary judgment) を擁護した。仮に下級裁判所が線引きを過度に厳しく設定した場合、その解決策はEgyptian Goddessを放棄するのではなく、控訴審での地裁判決の破棄 (reversal)とするべきである。
この補足意見は、本件がそのテストを再検討するには適切な事例ではないと指摘した。地方裁判所は両デザインが明らかな相違していると認定しただけでなくEgyptian Goddessで想定されている3者比較 (クレームされた意匠、被告デザイン、先行技術) を実施し、同様の結論に至っている。合議体はこれら両方の根拠に基づき原判決を支持したものである。
第2の分岐点:機能性の判断は裁判官の役割か、それとも陪審員の役割か
補足意見は、意匠特許の侵害判断が2段階で進むことを強調した。すなわち、裁判所がクレームを解釈し、次に事実認定者 (factfinder) がそのクレームを被疑意匠と比較検討する。クレーム解釈には、装飾的特徴 (ornamental features) と機能的 (functional) 特徴を区別することが含まれる場合がある。MarkmanおよびTevaを引用し、補足的な事実認定が必要とされる場合でも、クレームの範囲は依然として法的問題のままであると論じた。
これに対し、Chief Judge Mooreは異議を唱えた。意匠特許のクレームは通常、図面を通じて伝達されるため、文書の解釈である特許クレームの解釈を裁判官に委ねる根拠は、意匠特許においてはほとんど当てはまらないと述べている。また、機能性は、代替デザイン、特許、マーケティング資料、証言などの外部証拠に依存することが多く、文脈によって事実問題として扱われる要素であることも多いと強調した。
反対意見は、機能性 (functionality)、装飾性 (ornamentality)、および実質的類似性 (substantial similarity) を、侵害の相互に関連する要素として陪審員に委ねるべきだと主張した。これは略式判決 (summary judgment) を排除するわけではないが、Chief Judge Mooreは、極端に明白な事例向けに設けられた簡略化された”明白な相違 (plainly dissimilar)”という判断基準が、現在では極めて視覚的に類似した比較において陪審員の役割を置き換えるものとなってしまっている、と論じた。
実務上の示唆
略式判決 (summary judgment) は依然として強力な抗弁手段である。本判決は、デザイン全体が十分に区別できる場合には、侵害を問われている当事者に対して略式判決 (summary judgment) を申し立てることを実質上推奨している。
代替的な分析が重要である。地裁における直接比較および3者間の先行技術比較は、判決を支持する独立した根拠となった。当事者は記録が許す限り、両方の分析を行うべきである。
機能性は依然として裁判所が扱うクレーム範囲の問題である。裁判官は、デザインのどの側面が機能的であり、それらの側面がクレーム範囲にどのように影響するかを判断する際、特許、代替デザイン、および製品のマーケティングを評価する可能性がある。
制度的議論は終わっていない。 4名の裁判官が反対意見を述べたことは、通常の観察者 (ordinary observer) という基準の枠組みおよび裁判官と陪審員の役割分担について重大な意見の相違が存在することを示している。
意匠特許権者にとって、本判決は装飾的な柔軟性を文書化し、クレームされた意匠を機能に起因する制約と区別する必要性を改めて強調するものである。一方、被疑侵害者にとっては、機能性と視覚的に顕著な相違点は、クレーム範囲を狭め、早期解決を図るために重要な手段であり続けている。
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